2012年3月19日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「奨学金滞納"ブラックリスト"続出と大学全入の関係」
を企画、取材、執筆しました。
キーワードは「大学全入」。
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17日付朝日新聞朝刊の一面トップに「奨学金1万人滞納 10年度以降、信用機関に登録」という記事がある。これによると、独立行政法人・日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金の貸し出しは、123万1,378人、総額1兆118億円に上り、3カ月以上の滞納額は約2,660億円に上っているという。(2010年度末時点)
債権回収の強化のため同機構は、10年度から3カ月以上の滞納者の情報を信用情報機関に登録し始めた。信用情報機関とは、いわゆる「ブラックリスト」。一旦これに登録されてしまうと、クレジットカードにほぼ入会できなくなる。10年度の登録件数は4,469件、11年度は今年2月現在で5,899件、計1万368件に達したという。
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さらに、滞納が9カ月以上になると、機構は奨学金返還を求めて裁判所に督促を申し立てているという。要するに、"裁判沙汰"である。その件数は06年度の1,181件から、10年度は7,390件に急増しているという。いまや毎日20人以上が訴えられているわけだ。
こうした状況を踏まえ、同記事では千葉大学名誉教授の三輪定宣氏が「2人に1人が奨学金を受け取る現状を踏まえ、給付型の導入など奨学金制度の抜本的な見直しが必要だ」と訴えている。
だが、ちょっと待ってほしい。そもそも奨学金が大幅に増え始めたのは、「少子化で大学破綻が続出する」と言われ始めた1999年にさかのぼる。この年に国は、有利子奨学金の貸し出し枠を、一気に2倍に拡張したのである。
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応募基準も大幅に緩和した。例えば99年以前は「高校2〜3年の平均値が5段階評価で3.2以上」の学力が必要だったが、「平均水準以上」というアバウトな表現に変わり、さらにそれ以下でも「特定分野において優れた資質能力がある」「学習に意欲がある」と認められれば、応募可能になった。
こうして05年の頃にはすでに「有利子の奨学金はここ数年、応募基準さえ満たせば全員に出している」(日本学生支援機構の赤羽新一広報課長)という状況になっていた。(2005年9月4 日付日本経済新聞朝刊より)
その後も国は、有利子奨学金の貸出額の上限を月10万円から12万円に増額するなど、拡充を図ってきた。その結果どうなったかというと、奨学金の貸与(たいよ)金額は、98年度の2,661億円から10年度末時点で1兆円強にまで膨らみ、進学率は上がり続けた。
要するに、「大学全入」現象のウラで、国は奨学金をジャブジャブ注入してきた。これによって、かつてなら資質や目的意識、費用対効果などを踏まえ、大学進学をためらったであろう人たちも、「奨学金により当座はしのげるし、みんな大学に入っているし、卒業後はちゃんと就職して何とかなるはず」といった理由で、どんどん進学した。
その結果、大学の質は一層下がり、卒業後も仕事に就かなかったり、収入が少ないなどの理由で、奨学金を返せない人が続出しているというわけ。
「すべての人に大学教育の機会を与える」といえば聞こえはいいが、大学全入とは、実は教職員を食わせることが真の目的で、"大学延命"のための装置が奨学金だったのではないか、と疑われてもしょうがないのではないか。
前述の教授のように奨学金を給付制にすれば良しといった話ではなく、大学の存在そのものの見直しが迫られているといえよう。
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