災害現場での人命救助に貢献するレスキューロボット。ロボットと聞くと、人間の出番がなく救急活動を勝手にこなしてしまうイメージを持つが、実際は人が行う各種活動を支援するのが主だ。特に危険で人が辿り着けない場所に行って情報収集する重要な機能を担う。二次災害のリスクも低減し、効率よい救助活動も実現する。
救助活動は単純ではない。例えば瓦礫の下敷きになり腕や脚を挟まれている人の場合、すぐに圧迫から解放されると「クラッシュシンドローム」で死に至る場合がある。つまり、状況に応じて何をしたらよいかを知る情報収集が不可欠だ。現場ではどこに要救助者がいるかを誤差1mの精度で知り、ケガなどの状況を詳しく把握する必要がある。
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レスキューロボットが普及すれば火災やガスの発生、崩れかけた建物の崩壊など二次災害のリスクを救助者に与えることなく作業を行える。ロボット研究の進展に加え、センサやアクチュエータなどの要素技術の性能向上と併せて低価格になり、実用化が近づいてきた。
レスキューロボの基準づくりは緒についたばかり
レスキューロボットにはヘビ型や無限軌道(クローラ)、飛行機、4本脚など多彩な形がある。東京工業大学の広瀬茂男教授は「形は何でも良い。役に立てばそれがロボット」と主張する。要は、不整地や狭い場所など人が行けない場所に行き、情報収集できることが重要だという。
世紀は何ですか?
「制作費が100億円の高機能ロボットでは誰もお金を出さない」。東北大学の田所諭教授は、コストの重要性を説く。田所教授は神戸大学の助教授時代に阪神・淡路大震災に遭遇、「ロボットで人命を救いたい」という思いが強い。
数ある研究成果の中でも本体のクローラと、手足のように伸びたクローラを使い不整地を自在に走り回る「Quince(クインス)」(写真)や、ヘビのように瓦礫のすき間を進んで様子を映し出すケーブル「能動スコープカメラ」は、海外の災害現場でも試され高い評価を得ている。採用まで、あと一歩のところまできた。
ただレスキューロボットの先行きには不安がある。まず市場が小さい。日本は消防署に行き渡るとほぼおしまい。ゆえに「海外採用を考えるのは当然」(田所教授)だという。欧米でもレスキューロボットの普及はこれからで、試験方法や性能の数値化といった採用を判断するデータの基準策定が始まったばかり。日本も国際基準づくりに積極的に加わり、普及につなげたいところだ。
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日常的な用途をいかに組み合わせるか
不整地移動や、狭い場所の探査能力などをほかの用途に生かした市場開拓も求められる。むしろ、こうした日常的な用途と組み合わせるかが普及のカギとなる。
有望視されるのは保守点検分野。狭く入り組んだガス管や電気設備、住宅床下点検、建物内を調べるのは災害救助用のロボットは得意だ。大量生産による低コスト化やユーザーの声を生かしてロボットのさらなる性能向上にも結びつく。用途拡大への期待は大きい。
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